【検査シリーズ】猫の尿検査、何を見ているの?〜検査が必要なタイミングや検査項目について〜
〜検査が必要なタイミングや検査項目について〜
1.はじめに
今までに猫の泌尿器系疾患に関するブログをいくつか載せてきました。
→猫の膀胱炎について知っておきたいこと~症状・原因・治療・予防まで~
この中で必ず行っている検査の中に尿検査があります。
尿検査は比較的猫に負担が少なくできる検査で尿中の成分や顕微鏡上での所見から様々な病気やその兆候を調べることができます。
健康診断の際に行うこともあれば特定の症状が見られた際に行うこともあります。
今回の記事では尿検査の実施するタイミングや検査項目について獣医師が分かりやすくご説明します。
「尿検査をしますね」と決まった後に院内でどのように検査を行なっているのかなどもご紹介したいと思います。
2.尿検査が必要なタイミング
尿検査は以下のような症状が見られた時に病気の精査のために行われることがあります。
・血尿などの色の変化
・頻尿
・尿量の増加
・いつもより匂いが強い
また、健康診断で以下のような所見が得られた場合尿検査も追加することがあります。
・血液検査で腎臓の数値が高い
・レントゲン検査やエコー検査で結石のようなものがみられる
・エコー検査で膀胱に溜まっている尿が汚い、膀胱の壁や形がいびつ
猫ちゃんは泌尿器系のトラブルが起きやすいため早期発見がとても大切です。
3.採尿方法

採尿方法は主に3つあります
①自然排尿を採取
様々な方法がありますが固まる砂を使用するトイレの場合は砂の上にサランラップを敷き、水たまりのようになったおしっこを回収する、システムトイレの場合はペットシーツを裏返しにしてそこにおしっこをしてもらう方法などをおすすめしています。1番猫に負担がかからない方法で当院では採尿用のシリンジをお渡しして持ってきていただくことがあります。なるべく新鮮な尿であることが理想です。
②穿刺採尿
エコーで膀胱の場所を確認しながらお腹から膀胱に直接針を刺して採尿する方法です。膀胱に溜まっている尿を直接もらうので自然排尿やカテーテル採尿よりも綺麗な尿を回収することができます。
③カテーテル採尿
尿道から膀胱内にカテーテルを入れて採尿する方法でこちらもエコーで確認しながら行う場合があります。溜まっている尿が少ない場合などにはカテーテル採尿を行います。
4.検査項目
まずは
・見た目の色
・におい
・濁り具合
を観察します。
その後、ペーパー試験紙、尿比重計、顕微鏡を用いてそれぞれ検査を行います。
◯ペーパー試験紙
当院で用いている試験紙では以下の項目が測定できます。
尿を置いてから30秒後の色の変化で判定します。
ウロビリノーゲン・ビリルビン:肝臓・胆道系疾患や溶血性疾患がないかを見る項目です。
ケトン体:糖分を栄養として利用できている場合には検出されません。糖尿病や長期間の絶食状態などで糖分を栄養としてうまく利用できない場合に検出されることがあります。
タンパク質:正常な尿では検出されても少量です。腎機能に問題がある場合に尿中にタンパク質が検出されることがあります。
ブドウ糖:正常な尿ではほとんど検出されません。糖尿病や腎臓の機能が低下している場合に検出されることがあります。
pH:猫の尿は弱酸性から中性に保たれています。酸性やアルカリ性に傾いていると結晶ができやすくなります。
潜血:尿路のどこかで出血が起きている場合や赤血球が破壊され中のヘモグロビンが溶け出ている場合に潜血が見られます。


◯尿比重計
尿の濃さを測定します。
猫の尿比重の基準値は約1.035-1.060と決まっているので基準に入っているのか、逸脱しているのかを判定します。
たくさんお水を飲みたくさん尿が作られているような状態では尿が薄く(値が低く)なり、脱水傾向にある状態や余計なものが尿中に含まれている時には尿が濃く(値が高く)なる傾向にあります。

◯顕微鏡検査
最後に尿を直接顕微鏡で観察します。
赤血球や白血球、細菌、結晶の有無などを確認します。画像検査で結石が認められた場合には顕微鏡で観察することで結石の種類まで特定できる場合があります。

◯尿タンパク質
血液検査で腎臓の値が高く腎臓病の疑いがある場合などには機械で尿中のタンパク質の量を測ることがあります。正常であれば尿中にタンパク質はほとんど含まれませんが腎臓の機能が落ちている場合には体内のタンパク質が尿中に漏れ出ていることがあり腎臓病を悪化させる可能性があります。ペーパー試験紙でも検出することはできますが正確な値を測るには機械で測定する必要があり当院では院内での測定が可能です。
5.まとめ
今回の記事では尿検査が必要なタイミングや検査方法についてご説明しました。
尿検査も体の状態を把握するためにとても役立つ検査で多くの情報を得ることができます。
頻尿や色の変化があった際にはもちろんですが何も症状が無い場合にも一年に一回は健康診断として行うこともオススメします。
当院では猫の健康診断として尿検査を行うことも可能です。
まずはご相談からでも構いません。お気軽にいらっしゃってください!