犬や猫の肥満、なぜ悪いの? 〜健康に与える影響と予防の大切さ〜
〜健康に与える影響と予防の大切さ〜
1.はじめに
ふっくらとした体型のわんちゃんや猫ちゃんは、一見するととても可愛らしく見えます。ですが、人と同じように犬や猫にも「健康的な体型」があります。肥満は見た目だけの問題ではなく、関節や心臓、代謝など体のあちこちに負担をかけ、寿命にも影響する大きなリスク要因です。
犬や猫にとっても適正な体重を保つことが健康で長生きするための大切なポイントです。今回は体型・体重管理に関して獣医師の視点から分かりやすくご説明します。
「ちょっと太ってる気がするけど何が適正なのかがわからない」
「病院でダイエットを勧められたけど…難しそうだなあ」
そんな飼い主様の参考になればと思います。
2.そもそも肥満とは?
獣医学的には肥満とは「体脂肪が過剰に蓄積した状態」を指します。
犬や猫の肥満度は、BCS(ボディ・コンディション・スコア)と呼ばれる指標で評価します。これは見た目や体を触った感触で体脂肪の量を判断する方法で、5段階や9段階の評価方法がよく用いられます。
理想体型では肋骨を軽く触って分かる程度ですが、肥満になると肋骨が脂肪に覆われて分かりにくくなり、お腹まわりが丸くなります。逆に骨格が明らかにわかるような体型は痩せすぎとの判断になります。

肥満の原因としては
- ・フード、おやつの食べ過ぎ
- ・運動不足
- ・避妊手術、去勢手術による代謝の変化
- ・代謝性疾患(副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症など)
- ・加齢
- ・遺伝
などが挙げられます
3.肥満が引き起こす健康リスク
犬や猫が肥満になると、さまざまな病気や体の不調につながります。
〇︎関節や足腰への負担
体重が増えると膝や椎間板に過剰な負担がかかり、関節炎や椎間板ヘルニア、歩行困難などを引き起こしやすくなります。このことから散歩や運動を嫌がるようになりさらに体重が増えるという悪循環に陥りやすいです。
〇︎呼吸・心臓への影響
脂肪が胸やお腹にたまると、呼吸器官が圧迫され呼吸がしづらくなったり心臓への負担が増す状態になります。特に心臓病を持っている犬では、症状をさらに悪化させる危険があります。
〇︎糖尿病や膵炎
特に猫では肥満と糖尿病の関係が強く、肥満猫の糖尿病発症リスクは正常体型の数倍に上がるといわれています。犬でも膵炎などの病気のリスクが高まります。
〇︎皮膚病
脂肪で皮膚が擦れたり蒸れやすくなり、膿皮症や外耳炎などの皮膚トラブルが起きやすくなります。
〇︎寿命が短くなる
複数の研究で、肥満の犬や猫は平均寿命が短くなることが報告されています。肥満は生活の質を落とすだけでなく、寿命そのものにも関わってくるのです。
4.肥満の予防と日常生活の工夫
肥満は食事や運動量の調節で改善することが出来ます。また、日頃から意識することで、肥満を防ぎやすくなります。
食事管理:フードの適正量を守ることが基本です。フードのパッケージの裏側に体重に適した食餌量が記載されていることがほとんどです。新しいご飯を試す際はそちらを参考にしてみてください。繊維質が多めのダイエット用のご飯を選択することも一つです。また、おやつはしつけやご褒美のタイミングのみにしたりフードをおやつ代わりに取り入れる方法も有効です。さらに人間の食べ物の与えすぎは大きな肥満要因となりますので気をつけましょう。
適度な運動:犬は毎日の散歩や、遊びを通じてしっかり運動を取り入れましょう。猫は遊びやキャットタワーなど室内でも運動できる環境を整えましょう。
定期的な体重測定・健康診断:定期的に体重を測り、変化を記録しておきましょう。急なダイエットは逆に体に負担をかけてしまうため焦らず行なってください。成長期は体重が増えますが1歳を超えてからの体重の増減には要注意です。体重だけでなく、健康診断として血液検査などで病気のリスクも同時にチェックすることが大切です。
5.まとめ
犬や猫の肥満は「ちょっとぽっちゃりで可愛い」だけでは済まされず、関節、心臓、糖代謝、皮膚など全身に影響を及ぼす深刻な問題です。
健康的な体重を維持することは、病気の予防だけでなく健康寿命を延ばすことに繋がります。ただしただの肥満だと思っていたら実は代謝性疾患であり病気の治療が必要だったというケースもあります。
もし愛犬・愛猫が太ってきたかも?と感じたら、自己判断せずに一度動物病院でご相談ください。当院でも飼い主さんと一緒に、その子に合った体重管理の方法をご提案できるように丁寧に対応させていただきます。
武蔵野市・三鷹市・小金井市・調布市・西東京市地域の 犬・猫やウサギ・ハムスター・フェレット・モルモット・デグー・フクロモモンガ・インコ・トカゲ・カメ・カエルなどのエキゾチックアニマルを診察する「武蔵野まりん動物病院」です。 セカンドオピニオンとしても気軽にお頼りください!