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猫の尿が赤い? 〜血尿の原因とその治療について〜

猫の尿が赤い?
〜血尿の原因とその治療について〜

1.はじめに

猫のおしっこの色がいつもより濃い、赤っぽい色をしていると感じた時は血尿の可能性があります。実は猫の血尿は泌尿器症状の中でしばしばみられる症状のひとつで、膀胱炎や尿石症などいくつかの病気が考えられ軽い炎症から早急に対応が必要な疾患までさまざまな原因で起こります。
また、血尿と似た見た目の「血色素尿」というものがあります。尿に赤血球の色素が混ざっている状態のことで何らかの原因で赤血球が破壊され赤血球中に含まれる赤い色素が尿中に出てきてしまうと血色素尿となります。赤い尿がみられた際には血尿と血色素尿を見分け、原因がどこにあるのかを調べ対処することが重要です。

今回は猫の血尿が見られた時に考えられる原因・検査・治療について獣医師の視点からわかりやすく解説します。

2.猫に血尿が出る主な原因

血尿とは、文字通り尿の中に赤血球が混じっている状態です。
見た目で赤い、ピンクっぽい、茶色っぽいと気づくこともありますが、肉眼ではわからない顕微鏡レベルの血尿(潜血)もあり、血尿の程度によって見た目が変わります。

猫の血尿が見られた際に考えられる原因はいくつかあります。

① 特発性膀胱炎

「特発性」とは尿検査や画像検査を行っても明確な原因が特定できないという意味ですが猫の血尿の原因の中で最もよく見られる原因です。
比較的若めの猫に多く、ストレスや環境の変化が関与すると考えられています。トイレの数が少ない、同居猫との関係、生活リズムの変化なども影響する可能性があります。
血尿のほかにも何度もトイレに行く、一回に少ししかおしっこが出ない、排尿時に痛そうに鳴くといった症状を示します。

② 膀胱結石・尿道結石

尿中のミネラル成分が結晶化し、その結晶が固まると石にようになり結石となります。その結石が膀胱や尿道の粘膜を傷つけると炎症が起こり出血の原因となることがあります。猫の結石はストラバイト結石やシュウ酸カルシウム結石と呼ばれるものが代表的です。またオス猫は尿道が細いため結石が詰まりやすく注意が必要です(尿道閉塞)。

尿検査を行うと顕微鏡上で結晶が観察されたりレントゲン検査やエコー検査で結石が確認できる場合があります。

③ 細菌性膀胱炎

猫は細菌性膀胱炎に対する防御機能が発達しているため犬に比べて発症率は低いですが高齢の猫や、糖尿病や腎臓病などの他の病気がある場合にみられることがあります。また、メスはオスに比べて尿道が短いため膀胱に細菌が侵入しやすく感染が起こりやすいとされています。
細菌感染によって膀胱内に炎症が起きると頻尿や血尿、濁った尿、強いにおいの尿などが見られることがあります。顕微鏡で尿中の細菌を検出することで診断します。

④膀胱の腫瘍

膀胱炎や結石と比べると比較的稀な疾患ですが膀胱の腫瘍が原因であることもあります。移行上皮癌(悪性)や平滑筋腫(良性)などと呼ばれる腫瘍ができると膀胱の粘膜に炎症が起こり血尿の原因となることがあります。尿検査で異常な細胞が検出されたり画像検査で異常な構造物が確認された場合に腫瘍を疑います。

3.診断と治療

<診断>
動物病院では、以下のような検査を組み合わせて診断します。

尿検査:尿比重、pH、潜血、結晶の有無、細菌の有無などを確認します。
レントゲン検査:レントゲン上でわかる結石や構造の異常の有無を確認します。
エコー検査:膀胱の壁が厚くなっていないかどうか、おしっこが溜まっているかどうか、結石や腫瘤のようなものがないかなどを確認します。
尿の細菌培養検査:細菌感染が疑われた場合に相性の良い抗生物質を探すために外注検査を行うことがあります。

これらの検査を総合して血尿の原因を見極めます。

必要に応じて血液検査などで腎臓の機能の評価を行うこともあります。

<治療>

〇特発性膀胱炎の場合
明確な原因がないため、症状を和らげる治療やストレスを減らす環境改善などがメインとなります。トイレの大きさを大きくする、数を増やす、猫がリラックスできる場所を作るなどの生活環境の見直しが必要です。多くの場合は一週間以内に症状が落ち着きますが原因を特定できず再発することも多くあります。痛みが強い場合には痛み止めを使用することもあります。

〇膀胱結石・尿道結石の場合
ストラバイト結石の場合は食事療法でコントロールできることが多く、シュウ酸カルシウム結石は食事療法で溶解できないので重度の臨床症状が見られる場合には外科的摘出を考慮する必要があります。いずれの結石も再発を防ぐために飲水量を増やすなどの日常的な予防が必要です。

〇細菌性膀胱炎の場合
抗生物質で改善することが多いですが、背景に免疫力が低下するような疾患がある場合には再発を繰り返すこともあり、基礎疾患の治療を優先して行います。

〇腫瘍の場合
腫瘍には良性のものと悪性のものがあります。腫瘍の種類によって根治、緩和、対症療法など治療法は様々です。

4.まとめ

猫の血尿は、膀胱炎や結石などいくつかの原因が考えられます。特発性膀胱炎のようにはっきりとした原因が見つからない場合も多くあります。そのため一度の治療で終わるものではなく生活環境の改善や日々のケアがとても大切です。治療やご飯の変更が必要な場合もあるので血尿が見られたら動物病院を受診してください。
当院でも猫の尿トラブルに対して検査や治療を行っています。気になることがある際はお気軽にご相談ください。

猫の膀胱炎についてのブログはこちら

猫の膀胱炎について知っておきたいこと~症状・原因・治療・予防まで~


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