武蔵野まりん動物病院ブログ blog

犬と猫の麻酔について 〜リスク評価と安全のための取り組み〜

犬と猫の麻酔について
〜リスク評価と安全のための取り組み〜

1.はじめに

手術や処置の際に必要となる麻酔。
飼い主様の中には麻酔は怖いというイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか。
確かに、100%安全な麻酔はなく、健康な子でも少なからずリスクが伴います。しかし、現在の獣医療ではリスクを最小限に抑えるため、麻酔を行う前に必要な検査を行ったり麻酔中の管理を行うことで安全に実施する方法がとられています。

ここでは全身麻酔の気になる部分について獣医師視線からわかりやすくご説明します。

2.なぜ麻酔が必要なのか

麻酔には全身麻酔と局所麻酔があります。全身麻酔の目的は動物を眠らせ、痛みを感じさせないことです。局所麻酔は動物を眠らせることなく部分的に痛みを取り除くことです。犬や猫はじっとしていてとお願いしても理解できません。
不安や痛みを感じると暴れてしまい、処置自体が危険になってしまいます。そのため、避妊手術、去勢手術や歯科処置、腫瘤の切除など、動物病院での多くの治療で全身麻酔が必要になります。

3.麻酔のリスクについて

短時間の麻酔であっても麻酔薬を使用する際にはどんなに健康な子でもリスクが伴います。
さらに、持病がある場合や高齢の場合はリスクが高くなることもあります。
こうしたリスクを事前に評価することで麻酔が可能かどうか、また適切な麻酔薬の選択に役立てることができます。このリスク評価には麻酔リスクの5段階分類(ASA-PS分類)が用いられています。

麻酔リスクの5段階分類

数字が大きくなるにつれリスクは高くなります。

ASA I:若くて健康、もしくは局所的疾患で全身状態は極めて良好

ASA II:軽度の基礎疾患があるが、全身状態は安定している

ASA III:中程度から重度の疾患があり活動低下が認められる状態。

ASA IV:命に関わるような病気があり、状態が不安定。

ASA V:極めて重篤な状態で手術の有無に関わらず24時間以内の生存が期待できない状態。

健康な若い子の避妊・去勢手術ではASA Iにあたることが多く、麻酔リスクは非常に低いと考えられます。ある報告では麻酔関連死亡率は1000頭に1-2頭の割合だと言われています。

 

4.安全に麻酔を行うために

当院では麻酔の安全性を高めるために以下の取り組みを行っています。

・術前検査で全身状態を評価します。血液検査・レントゲン検査・エコー検査など年齢や状態に合わせて必要な検査を組み合わせて行います。

・術前検査結果を元に個々の状態に合わせた麻酔薬の選択をします。

・麻酔中は心電図、血圧、酸素濃度、体温などをモニタリングします。

・術後は麻酔から醒めた後の状態も管理し必要によって鎮痛薬などを用いることがあります。

これらを徹底することで、麻酔のリスクを可能な限り抑え、安全に手術や処置を行えるよう努めています。検査結果によっては本来の目的以外の病気の治療を優先したり麻酔を行わずに治療できる方法をご提案することがあります。

また、手術前日の21時頃からは絶食をお願いしています。麻酔をかけた状態では嚥下能力を失うため胃の中のものが逆流した場合に気管から肺へと流れてしまい誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があるからです。

5.まとめ

犬や猫の麻酔には少なからずリスクがありますが、術前検査を行い麻酔の可否を判断しリスクを最小限に抑えるように努めています。
とはいえ大切な愛犬や愛猫の麻酔に対する不安は尽きないと思います。

手術や処置に不安がある場合は、ぜひお気軽にご相談ください。飼い主様と一緒にその子にとっての最適な治療法を考えていきます。麻酔や手術の選択は決して軽いものではありませんが安心して治療を受けていただけるようしっかりとご説明させていただきます。


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