犬の無麻酔スケーリング(歯石除去)の危険性 ~当院で行っている歯科処置について~
~当院で行っている歯科処置について~
1.はじめに
「無麻酔スケーリング」という言葉を聞いたことはありますか?
インターネットや一部の施設では簡単に歯石が取れる、麻酔を使わないから安心と宣伝されており、興味を持たれる方もいらっしゃると思います。
しかし実際には、無麻酔でのスケーリングには処置の限界やリスクがあることをご存じでしょうか。
当院ではワンちゃんの安全と健康を第一に考え、スケーリングは必ず麻酔下でのみ行っています。
今回は、無麻酔スケーリングと麻酔下スケーリングの違いについて、飼い主さんに分かりやすくお話しします。

2.無麻酔スケーリングとは?
そもそもスケーリングとは、歯に付着した歯垢や歯石を除去し、歯周病の予防や治療を行う処置のことを言います。
無麻酔スケーリングとは、麻酔をかけずに表面の歯垢や歯石を専用の器具で削り取る処置のことを指します。
【メリットとして見える点】
- 麻酔をかけないため「リスクが少ない」と感じられる
- 日帰りでできる
- 見た目上は歯石が取れてきれいに見える
こうした点から安全で手軽なら、と思う飼い主さんがいるのも自然なことです。
【無麻酔スケーリングの問題点】
ただし、動物医療の立場から見ると、無麻酔スケーリングには以下のような大きな問題があります。
犬は人間と違い、じっと口を開けて処置を受けることができません。無理やり押さえつけると強いストレスや恐怖を与えてしまいます。それによりいつもは出来ていた歯磨きやお手入れさえもさせてくれなくなってしまう可能性があります。また、動く犬を押さえながら処置すると、器具で歯や歯ぐきを傷つけてしまう可能性があります。
実は歯石や歯周病の原因は、歯ぐきの下にある歯周ポケットに潜んでいる細菌や歯垢です。無麻酔の場合はそこまで器具を入れることができず、根本的な治療にはなりません。見た目はきれいになっても、病気の進行は止められないのです。
麻酔下の処置では、歯周ポケットの深さを測ったり、ぐらついている歯を確認したりと「検査」と「治療」を同時に行います。無麻酔スケーリングではこうした確認ができないため、歯周病や口腔内の異常が見逃されてしまいます。
日本小動物歯科研究会も無麻酔スケーリングについて警鐘を鳴らしています。
→ガイドライン
3.当院でのスケーリング方針
当院では、ワンちゃんの口腔内の健康を守るために、スケーリングは必ず全身麻酔下で行っています。
麻酔下で行うメリットは
- 犬に痛みやストレスを与えず、安全に処置ができる
- 歯周ポケットまでしっかり洗浄・治療が可能
- 抜歯が必要な歯を適切に処置できる
などです。
基本的には日帰りですが場合によっては入院が必要になることがあります。
もちろん麻酔にはリスクが伴いますが、事前の血液検査や状態チェックを丁寧に行うことで、安全性を高めています。
何よりも「根本的な治療ができる」「ワンちゃんに苦痛を与えない」ことが、麻酔下で行う最大のメリットです。
4.まとめ
無麻酔スケーリングは一見すると手軽に見えますが、実際には見た目だけを整える表面的な処置であり、歯周病を治療することはできません。
むしろ病気の進行を見逃したり、犬に痛みや恐怖を与えてしまう可能性もあります。
当院では、ワンちゃんの健康を第一に考え、麻酔下でのスケーリングのみを行っています。
飼い主さんには不安やご心配もあるかと思いますが、麻酔や処置の内容については丁寧にご説明いたしますので、どうぞ安心してご相談ください。
スケーリングについての詳しい記事はこちらです。合わせてご参照ください!
→【日常ケア】犬や猫の気になる口臭、改善できるかも?スケーリング(歯石除去)について
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