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【猫】くしゃみや涙…猫カゼの正体とは?

【猫】くしゃみや涙…猫カゼの正体とは?

1.はじめに

猫を飼っている方なら、一度は「猫カゼ」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。人間と同じように猫も風邪をひくの?と思う方も多いでしょう。実際には「猫カゼ」とは正式な病名ではなく、主にウイルスや細菌による「上部気道感染症」をまとめてそう呼んでいます。くしゃみ、鼻水、涙などの症状が出るため風邪のように見えるのですが、原因や対処法は人間の風邪とは異なります。

今回は、猫カゼの原因から症状、治療法について獣医師が詳しく解説していきます。

2.猫カゼの原因とは?

猫カゼの主な原因はウイルスと細菌です。代表的な病原体は以下の通りです。

・猫ヘルペスウイルス最も多い原因ウイルスで、「猫ウイルス性鼻気管炎」と呼ばれます。くしゃみ、鼻水、発熱、角膜炎などを引き起こします。感染すると生涯ウイルスを体の中に保有し続け、ストレスがかかった時や免疫力低下の際に再発するのが特徴です。

・猫カリシウイルス猫ヘルペスウイルスと並んで感染が多いウイルスです。ヘルペスウイルスと同様の症状に加え口内炎や舌に潰瘍ができ、強い痛みのため食欲不振になることがあります。重症例では肺炎を起こすこともあります。症状は数週間で回復しますが回復後もしばらくはウイルスを排出し続けます。生涯ウイルスを保有し続けることもあります。

・クラミジア、マイコプラズマ、細菌類単独でも猫カゼの原因になりますが、ウイルス感染と同時に発症して症状を悪化させることが多いです。特に結膜炎や慢性的な鼻炎の原因になることがあります。

猫カゼは複数の病原体が関与していることが多いため、一度治ったように見えても再発を繰り返すことがあります。

3.主な症状

猫カゼは人間の風邪に似た症状を示しますが、時に命に関わるほど重症化することもあります。特に子猫や高齢猫、免疫力の低下している猫では注意が必要です。

よく見られる症状は以下の通りです。

・くしゃみ、鼻水

・涙、目やに

・結膜炎(目が赤く腫れる)

・発熱、元気消失

・食欲不振

・咳や呼吸困難

・よだれや口内炎

これらの症状が重なると、猫は鼻が詰まってにおいが分からなくなり、食欲が落ちてしまいます。

<感染経路について>

猫カゼは飛沫感染や接触感染で広がります。

感染猫のくしゃみや鼻水に含まれるウイルスが空気中に飛び散ることで感染します。食器、トイレ、ベッドなどを複数の猫ちゃんで共有する場合は感染する可能性があります。

また、ヘルペスウイルスやカリシウイルスはキャリア化(ウイルスを体内に持ったまま一見元気に見える状態)することがあり、知らないうちに他の猫へ感染させてしまうこともあります。

4.診断と治療

<診断>

猫カゼの診断は、身体検査に加え、症状の特徴や飼育環境、年齢などから総合的に行います。

顕微鏡検査:鼻水や目やにを採取し細菌や炎症細胞の有無を確認します。

細菌培養検査:必要に応じて、採取した鼻水や目やにを用いて細菌培養検査を行い相性の良い抗生物質を見つけることもあります。

<治療>

猫カゼの治療は、原因に応じて行いますが対症療法が中心となります。

対症療法

鼻水・鼻づまりを和らげる点鼻薬、目薬、ネブライザー療法(吸入治療)などを行い、呼吸をしやすくします。抗生物質は細菌感染や二次感染が疑われる場合に使用します。ウイルス自体には効きませんが、症状を悪化させる細菌感染を抑えるのに有効です。

抗ウイルス薬

特にヘルペスウイルスに対して、インターフェロン(免疫系の調節)や抗ウイルス点眼が使われることがあります。

痛みの管理

口内炎や潰瘍がある場合には、鎮痛剤を使って食欲をサポートします。

栄養・水分補給

食欲不振が続く場合は、流動食を与えたり点滴で水分や栄養を補ったりします。食べられない状態が続くと命に関わるため、積極的なケアが必要です。

5.予防のためにできること

猫カゼを完全に防ぐことは難しいですが、飼い主さんができる予防策があります。

・ワクチン接種:三種混合ワクチンには猫ヘルペスウイルスとカリシウイルスが含まれており、重症化を防ぐ効果があります。完全に感染を防げるわけではありませんが、命を守る大切な予防策です。

・ストレスを減らす:猫ヘルペスはストレスで再発することが多いため、環境の変化をできるだけ少なくし、安心できる生活を整えることが大切です。

・衛生管理:多頭飼育ではトイレや食器を清潔に保ち、定期的に消毒を行いましょう。感染猫と健康な猫は可能であれば隔離するのが理想です。

・定期的な健康チェック:早めに異常に気付くことで、重症化を防ぐことができます。特に「くしゃみ」「涙」「目の充血」は見逃さないようにしましょう。

6.まとめ

猫カゼは一度感染すると、体内にウイルスが残って再発を繰り返すことがあります。特にヘルペスウイルスは「生涯にわたり持ち続ける」ことが多いため、完全に治すのは難しい病気です。

しかし、適切な治療と生活管理によって症状をコントロールし、猫カゼと上手に付き合うことは可能です。気になる症状が見られたら早めに動物病院を受診してください。


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