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猫の慢性腎臓病とは【中高齢猫に多くみられる病気】

猫の慢性腎臓病とは【高齢猫の半数以上にみられる病気】

はじめに

近年、動物医療の発展のおかげで猫の寿命は延びています。それに伴って日常の診療において高齢猫の代表的な病気である慢性腎臓病と出会う機会も増えています。慢性腎臓病にさせないような予防も大切ですが、現在の獣医療において100%の予防法は存在しません。そこで、初期にこの病気を発見し悪化させないようにすることが最も重要だと考えています。
今回は慢性腎臓病について、そもそもの腎臓の働き症状、治療法などについて獣医師がわかりやすく解説します。

そもそも慢性腎臓病とは

腎臓の主な働きは、全身をめぐる血液をろ過して尿をつくり、老廃物を体の外に出すことです。そのほかにも、体内の水分の調節や血圧の調節など、生命維持に必要な多くの働きを担っています。
何らかの要因で腎臓がダメージを受けるとその機能が低下し、老廃物が体にたまってきたり脱水を起こしたりしてしまいます。そのような腎臓の機能の低下が3か月以上続くことを慢性腎臓病と定義しています。
慢性腎臓病は中高齢の猫に多く見られ、驚くことに15歳以上の猫の約80%が慢性腎臓病に罹っているという報告もあります。

どういった症状になるの?

初期には症状が目立たないことも多く、慢性腎臓病が進行によって以下の症状が徐々に認められるようになってきます。

・水を飲む量が増える
・尿量が増える、もしくは尿が薄くなってきた
・毛艶が悪くなってくる
・吐く頻度が増える
・食欲が落ちてくる
・体重が減ってくる
・元気がなくなってくる など

診断・治療についてステージを含めて解説

国際的な獣医の腎臓病グループ(IRIS)によって、慢性腎臓病は4段階のステージに分けられています。ステージによって食事や投薬などの治療法が変わってくるので、このステージ分類は慢性腎臓病を治療していくにあたって非常に重要となります。

【ステージ1】
血液検査での異常はほとんどなく、画像上での腎臓の構造変化や、尿検査での異常をとらえることで診断します。ここで大切なことは脱水にさせないことです。脱水が持続すると、腎臓への血液の供給が不足し、慢性腎臓病が悪化します。なので、常に新鮮な水を飲めるようにしたり、あまり水を飲まない猫に対してはドライフードをふやかしたりウェットフードに切り替えたりすることが大切です。基本的にはこのステージではまだ腎臓病用療法食への変更は必要ないことが多いですが、最近では猫の慢性腎臓病ステージ1用のごはんも販売され始めているので、気になる方は獣医師に相談してください。また、慢性腎臓病によって高血圧や蛋白尿を呈する場合は投薬や食事の変更が推奨されています。

【ステージ2】
このステージになると、ようやく血液検査上での異常がみられるようになります。また、飲水量が増えたかも、といった症状が目立ち始める頃になります。ここで飲水量が増えるのは、尿量が多くなって身体から水分が失われているからであるため、ステージ1と同様、脱水にさせないことは非常に大切です。このステージ以降は腎臓病用療法食が適用になります。低カリウム血症になってしまったら、それに対する治療が必要になることもあります。
また、腎臓を保護する働きのあるベラプロストナトリウム(商品名;ラプロス)の投薬も検討されます。

【ステージ3】
このステージになると、食欲の低下や嘔吐といった症状が認められるようになり、脱水も進行してきます。そのため、制吐剤や食欲増進剤の投与を行ったり、定期的な皮下点滴が必要になる場合があります。また、血液中のリンが増加してしまったらリン吸着剤の投薬が検討され、貧血が認められる場合には造血ホルモンの注射を行うことがあります。

【ステージ4】
慢性腎臓病の末期のステージです。自力でごはんを食べることも困難であることが多く、栄養面でのサポートが必要になります。このステージになると、もう残りは長くないため、最期をどう迎えるかをしっかりと考えていかなければなりません。

ここまで各ステージの診断・治療を説明しましたが、慢性腎臓病では定期的な検査をしっかりと行い、状態に合った治療を進めていくことが大切です。
当院では、慢性腎臓病に猫に関して、初期であれば3か月~半年毎の定期チェック、ステージが進行してきたら1か月~3か月毎の定期チェックを推奨しています。

まとめ

慢性腎臓病は一度発症すると完治することのない進行性の病気で、生涯にわたって付き合ってく必要があります。ただし、そのステージにあった適切な検査や治療を行っていくことで病気の進行を遅らせることができます。初期は症状に気が付かないことも多いのため、血液検査や尿検査を含む定期的な健康診断が重要となってきます。
当院では、6歳まで(子猫期~成猫期)は1年に1回、7歳以降(中高齢期)は半年に1回の健康診断を推奨しています。


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