犬のアトピー性皮膚炎~診断や治療法について~
はじめに
犬のアトピー性皮膚炎は、日常の診察において診断することが多い病気です。若いうちからアトピー性皮膚炎と診断されて一生薬を飲まなければいけないと言われた飼い主さんも少なくはないかと思います。もちろん生涯にわたって薬を飲み続ける必要がある場合もありますが、中にはしっかりと検査をせずに治療を開始していて、実はアトピー性皮膚炎ではなく完治が見込める病気であったということや、ごはんを変えたら症状が良くなったというケースも珍しくはありません。
今回はそんなアトピー性皮膚炎に関して獣医師が解説します。
1.アトピー性皮膚炎ってなに?
アトピー性皮膚炎とは、遺伝的に原因があり慢性的な痒みを引き起こす皮膚病で、特徴的な臨床徴候を示しその多くが環境中のアレルゲンに対するIgE抗体の増加を認めると定義されています。
下記に示すような複雑な要因が合わさって発症すると言われています。
・遺伝的な要因
日本では以下の犬種がアトピー性皮膚炎を起こしやすいと言われています。
・柴犬
・シーズー
・コッカー・スパニエル
・ミニチュア・シュナウザー
・パグ
・トイプードル など
・皮膚バリア機能の低下
皮膚にはもともと外からの物質の侵入を防ぐ役割(皮膚バリア)がありますが、その機能が落ちると環境中の抗原が体内に侵入しやすくなってしまいます。
・免疫学的な異常
免疫学的な異常があることで、健康な犬では問題ないくらいの刺激でも過剰な免疫応答を起こしてしまいます。
2.症状
主な症状は季節性のある痒みです。1年中痒みが出ることもありますが、特に春から夏にかけての気温が上昇する時期に悪化することが多いです。
そして皮膚をかくことによって、皮膚の赤みや脱毛、黒ずみなどの症状が出てきます。症状が出やすい部位は脇の下や下腹部、前足の指の間、目や口の周り、耳などです。
3.診断
犬のアトピー性皮膚炎を確定できる検査は今のところ存在しないため、特徴的な症状があり、またそれに似た症状を示す他の病気を除外することで診断されます。
アトピー性皮膚炎に類似した症状を示す代表的な病気は以下の通りです。
・ノミアレルギー性皮膚炎
・疥癬症
・ニキビダニ症
・膿皮症
・マラセチア性皮膚炎
・食物アレルギー など
ただし、これらの病気とアトピー性皮膚炎が併発していることもあるため、診断には注意が必要です。
4.治療
アトピー性皮膚炎と診断されたら、主体となる治療は薬物療法になります。
以前はステロイド薬中心の治療でしたが、近年では副作用の少ないアポキル(成分名:オクラシチニブ)やゼンレリア(成分名:イルノシチニブ)という飲み薬、サイトポイント(成分名:ロキベトマム)という1か月間効果が持続する注射もあります。ただし、慢性化した皮膚に対してはステロイドや免疫抑制剤の方がより効果を発揮します。
また、指の間をなめる、などといった部分的な症状の場合は外用薬も有効です。
補助的な治療として、薬浴やスキンケア用の療法食、サプリメントなどを使用する場合もあります。
近年では腸のバランスを整えることによってアトピー性皮膚炎の症状を抑えることができる、といった報告も出てきているため、薬物に頼らなく時代も近いかもしれません。
まとめ
犬のアトピー性皮膚炎は生涯にわたって付き合っていく病気であるため、はじめの診断が大切です。実は食物アレルギーだった、ということもありその場合は適切なごはんが見つかれば薬に頼る必要はなくなります。また、アトピー性皮膚炎と診断されてもその子によって治療法は変わってきます。怪しいなと思う症状が見られたら様子を見すぎることなく、早めに獣医師に相談しましょう。
当院でも薬物療法はもちろん、皮膚用のごはんやサプリメントも扱っております。また、必要であれば薬浴も行っております。何か心配なことがあればお気軽にご相談ください。
武蔵野市・三鷹市・小金井市・調布市・西東京市地域の
犬・猫・エキゾチックアニマルを診察する「武蔵野まりん動物病院」