猫の耳ダニ症ってどんな病気?〜症状・原因・治療・予防まで〜
1.はじめに
猫の耳の中に黒っぽい耳垢がたくさんたまっていたり、しきりに頭を振ったり耳をかいている様子を見たことはありませんか?
もしかするとそれは 「耳ダニ症(耳疥癬症)」 かもしれません。
今回は、猫に多いこの病気について、獣医師がわかりやすく解説していきます。
2.耳ダニ症とは?
耳ダニ症は、ミミヒゼンダニという寄生虫が外耳道(耳の入り口から鼓膜までの部分)に寄生して起こる病気です。 ミミヒゼンダニは0.3mm程と非常に小さく肉眼で簡単には見つけられませんが耳の中で繁殖し、耳垢や耳の角質を食べて生活しています。
感染動物との接触によって感染するので子猫や保護猫、外に出る猫でよく見られます。強いかゆみや耳の炎症を引き起こすだけでなく、他の猫や犬にうつることもあるやっかいな病気です。
3.主な症状
耳ダニが寄生すると、次のような症状が見られます。
- 強いかゆみ:耳をしきりにかいたり、頭を振ったりする
- 黒っぽい耳垢:コーヒーかすのような黒褐色の耳垢がたまるのが特徴
- 耳の赤みや腫れ:炎症が進むと耳の皮膚が赤くただれる
- 二次感染:細菌や酵母菌が増え、外耳炎を悪化させる
重症化すると内耳炎につながり首が傾く、斜頸という症状や旋回運動など神経症状を引き起こす場合もあります。
<診断>
動物病院では、以下のような検査で診断します。
- 症状の観察:耳垢の色・かゆみの程度・行動の変化をチェック
- 耳鏡検査:耳の奥をライトで観察し、耳垢や耳の腫れ、赤みを確認します
- 顕微鏡検査:耳垢を採取して顕微鏡でダニや細菌を探す
顕微鏡で耳ダニを確認できれば、確定診断となります。
<治療>
耳ダニ症の治療は、耳の清浄と駆虫薬の使用が基本です。
・耳掃除
まずは耳の中の耳垢を取り除きます。耳垢が多いと薬が届かないため、動物病院では耳に負担の少ない洗浄液を使ってきれいにします。
・駆虫薬
スポットタイプ(首の後ろに滴下する薬):全身に行き渡り、ダニを駆除できます。
反応が悪い場合は点耳タイプの駆虫薬の使用を検討します。
・二次感染の治療
細菌や真菌による外耳炎を併発している場合、必要に応じて抗生物質や抗真菌薬を使って炎症を抑えます。
治療は数週間かかることもあるため、完治まで定期的に通院することが大切です。
5.予防法
耳ダニ症は感染症なので、再発防止と周囲への感染防止が重要です。
・定期的に駆虫薬を使う
・新しく迎えた猫ちゃんは健康チェックをしてから先住猫と接触させる
・多頭飼育では同居猫も一緒に治療する
・寝具やケージを清潔に保つ
特に外に出る猫は感染のリスクが高いため、定期的な予防薬がおすすめです。
6.まとめ
耳ダニ症は命に関わる病気ではありませんが、強いかゆみで猫に大きなストレスを与える病気です。 また放置すると耳の中がただれ、慢性的な外耳炎や鼓膜の損傷につながることもあります。
「耳をよくかいている」「黒い耳垢がたまっている」そんなときは早めに動物病院を受診してください。