子宮蓄膿症ってどんな病気? 〜避妊していない女の子に起こる、命に関わる病気とは〜
〜避妊していない女の子に起こる、命に関わる病気とは〜
1.子宮蓄膿症とは?
子宮蓄膿症とは、子宮内に膿(うみ)がたまってしまう病気です。
主に細菌感染が原因で、避妊手術をしていない中高齢の女の子、特に犬に多く見られます。
体の中に膿がたまり、それが外に排出されずに溜まり続けることで、全身の状態が急速に悪化することもある恐ろしい病気です。見た目は一見元気そうに見えることもありますが、放置すると命に関わる重篤な状態へ進行してしまう可能性があります。
2.なぜ子宮に膿がたまってしまうの?
犬や猫は、発情のたびにホルモン(主にプロゲステロン=黄体ホルモン)の影響を受けて、子宮の内膜が厚くなります。これは本来、妊娠に備える体の準備の一環です。
ところが、妊娠しない状態が続くと、厚くなった子宮内膜に細菌が感染しやすくなってしまいます。
特に多いのは、大腸菌などの細菌が陰部から子宮内に侵入してしまうケースです。加齢やホルモンの変化によって免疫力が低下していると、こうした細菌を排除できずに子宮内で炎症が起こり、やがて膿がたまり始めます。
3.子宮蓄膿症になりやすい子の特徴は?
以下のような子は特に注意が必要です。
・避妊手術をしていない中高齢のメス
・過去に何度も発情を経験している子
・過去に子宮や卵巣の異常を指摘されたことがある子
犬では6歳以上、猫では7歳以上での発症が多く見られますが、若い年齢でも起こる可能性はあるため注意が必要です。
4.子宮蓄膿症の主な症状
初期のうちはあまり目立った症状が出ないこともあり、飼い主さんが異変に気付きにくい病気です。ただし、以下のような変化が見られた場合は早急に受診が必要です。
・水をたくさん飲む・尿の量が増える(多飲多尿)
・食欲がない、元気がなくなる
・嘔吐や下痢
・呼吸が早い、体温が高い(または低い)
・お腹が張っている・触られるのを嫌がる
・陰部から膿や血混じりのおりものが出ている
膿が陰部から出ている場合(開放型)と、出てこない場合(閉鎖型)があります。閉鎖型の方が発見が遅れやすく、全身への影響も大きくなる傾向にあります。
5.放置するとどうなるの?
子宮蓄膿症を放置すると、子宮が破裂し腹膜炎を引き起こすリスクがあります。
また、子宮内の細菌が作り出す毒素が血流に乗って全身をめぐることで、敗血症や多臓器不全を引き起こし命に関わることもあります。
命に関わる状態に進行するスピードはとても早く、数日で手遅れになることもある病気です。
6.子宮蓄膿症の治療法
症状の進行具合や動物さんの年齢・体力によって治療方針は異なりますが、基本的には外科手術となります。
〇手術による子宮・卵巣の摘出
もっとも一般的で根本的な治療法です。感染源である子宮・卵巣をすべて取り除くことで、再発のリスクをなくします。ただし、すでに体力が落ちている場合は、手術前に点滴治療や抗生物質の投与で体調を安定させてから手術を行うこともあります。
(※内科的な治療法もありますが当院ではおすすめしておりません。)
7.まとめ
子宮蓄膿症は「予防できる病気」です
最も確実な予防法は、避妊手術を受けることです。
避妊手術は、子宮蓄膿症だけでなく、乳腺腫瘍の予防にもつながります。
乳腺腫瘍に関しては初めての発情を迎える前、または1回目の発情後のタイミングでの手術がより効果的とされています。
子宮蓄膿症は、命に関わる可能性のある重大な病気です。
避妊手術をしていない女の子のわんちゃんや猫ちゃんと暮らしている飼い主さんは、ぜひこの病気について知っておいてください。
「水をよく飲むようになった」
「元気がないけど様子を見ようかな…」
そんな小さな変化が、実は命を守るサインかもしれません。
早期発見と、避妊手術による予防が何よりも大切です。
少しでも気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
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